───朝。
深夜に降った雪が積もって、太陽の光を反射していた。
眩しくて、今の晶には見ていられない。カーテンを細く開けただけに
留まった部屋は、まだ少し夜の余韻を残してた。
冷えた床を裸足で歩いても、別段寒いと感じない自分が可笑しくて。
ほんの少し笑い掛けたその瞬間、視線がテーブルの上で固まった。
昨日遣り途中だったパズル。
どうしても見付からなかった最後のピース。
必死に探してた。無くなったなんてそんな終りは嫌だった。
何処までも自分の気持ちを汲み取ってくれた、とても優しい恋人は、
その時欲しかった言葉をくれたから、漸く離れる事が出来たのだけど。

「…あ?」
破片一つ分、ぽっかりと開いたスペースに何となく目を向けながら引いた椅子が、
軽く何かを飛ばした。
「犯人、克之じゃなかったのか」
多分影に隠れて見付からなかったんだろう。
拾い上げて見れば、真青な空の中に一つの小さな白い…
「…雲、かな…全部空かと思って…」
呟きかけた言葉が途中で消える。裏返しにしてみたのは大して意味があった
訳じゃない。嵌める前に何気なしにしただけだったのに。
其れは晶を酷く簡単に動けなくした。

   ──愛してるよ── 

無骨で、少し癖のある。だけど世界で一番大好きな字。
昨夜聞こえない振りを必死でした。
言葉と捕らえる前に、懸命に意識を手放そうとした。
それでも文字として出されてしまったらもう、目は逸らせない。
「…馬…ッ鹿…」
シンと静まり返った部屋、少しだけ響いた自分の声に、もう居ないのだと
思い知らされて。
2年前の想いが今は痛い。
他のピースは全部あったのに、何故か此れだけ見付からなかった事も。
「…早く、やれば良かった…」
そしたら一緒に笑えたのに。
「俺…何時もそういうの抜けてて…」
時間なんて幾らでもあると思ってたから。ゆっくりゆっくり遣ってたとしても、
変わらず其処に居てくれると安心して。変わらず隣に居られると安心して。
微かに震える指先で、最後の破片を嵌めこんだ。
出来上がった空に浮かんでたのは、雲じゃなかった。
「…羽?」
真青な空に、ふわりと浮かんだ小さな白が、今は酷く淡くて。
それが何処までも優しく映るから、
涙を止め様とした努力があっさりと無駄になる。

もう届かない。
 少年を今も抱き締めたいと願ってるこの腕が。
もう聞こえない。
 男が、優しい笑顔と一緒に囁き続けた沢山の言葉が。

全ては今、雪に溶けて。
サンタが降り立つ、聖なるこの日。
俺達は、きっと一番大事なものを失った。



  † END †

























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